インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

そう考えるのは簡単だけど、私から行動を起こすのはやっぱり勇気がいる。

一緒にいることに早く慣れて、せめて私から自然にトークメッセージを送れるくらいにはなりたいものだ。

エレベーターに乗り込んで１階が近付くにつれ、どんどん緊張感が増して手のひらに汗がにじみ、心臓は恐ろしいほどに異様な音を立て始めた。

私、ホントに大丈夫かな……？

これはもう緊張を通り越して、恐怖の域に達している。

今夜は生きて帰れるだろうか。

とうとうエレベーターが１階に到着して扉が開いた。

足をガクガクさせながらエレベーターを降り、おそるおそる待ち合わせの場所へ向かう。

ロビーにはまだ八坂さんの姿はなく、少しホッとしてソファーに座ると同時に、鞄の中からトークの通知音が聞こえた。

トークメッセージは八坂さんからで、少し遅くなるという内容だった。

ちょうど良かった、これで少しの猶予ができる。

わかりましたと返信を済ませ、八坂さんが来るまでの間に心を落ち着けようと深呼吸した。

それくらいでは到底落ち着かないので、少しでもリラックスするために漫画でも読んで待っていようかと、鞄から再びスマホを取り出す。