インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「で……どうだった?」

「うん……オシャレなイタリアンレストランで食事したよ。緊張してあんまり食べられなかったけど」

「うん……。それで?」

「それでって……それだけ。あっ、都合が合えば金曜日の夜に会おうって言われたくらいかな」

いつも通りを装って笑いながらそう言うと、尚史は怪訝な面持ちで私の頬を両手で包み込み、少し顔を近付けて私の目をじっと見つめた。

「ホントにそれだけか?」

「うん、それだけだよ。なんで?」

「駅で会ったときのモモ、顔色も悪かったし様子がおかしかったから」

「ホント?たぶん緊張してたからじゃないかな」

私は初めて尚史に嘘をついて隠し事をした。

嘘をついたことを見透かされそうな気がして、私はまっすぐに見つめてくる尚史から目をそらす。

「それより尚史……この手、離してくれる?こんなところ知り合いにでも見られたら恥ずかしいよ」

「ああ……そうだな」

尚史は私の頬から手を離し、もう一度手を握り直した。

八坂さんとあんなことがあったせいか、あたたかくて大きな尚史の手に安心する。

だけど心配してくれている尚史に嘘をついてしまったことが後ろめたくて、私の胸がズキズキと痛みを伴う軋んだ音を立てた。

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