インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
6時半を少し過ぎた頃、仕事を終えた八坂さんとビルの前で合流した。

「待たせてごめんね。もうすぐ退職するから取引先の引き継ぎとか、いろいろやることが多くて」

「お疲れ様です」

「じゃあ行こうか。7時に予約してあるんだ」

「はい」

わざわざ予約しなくちゃいけないような店に行くのは初めてだ。

この間のイタリアンレストランでも、カジュアルな店だと八坂さんが言っていたにもかかわらずじゅうぶん過ぎるほど緊張したけれど、今日はさらに上品な店なんじゃないかと不安になる。

テーブルマナーもよくわからない私がそんなお高い店に行っても大丈夫だろうか。

もしかして八坂さんと付き合うと、会うたびにそんな心配をすることになるのかな?

私は定食でも牛丼でも美味しければなんでもいいけれど、これからはそういうわけにもいかないだろうし、テーブルマナーをしっかり勉強しておいた方が良さそうだ。


八坂さんオススメの創作フレンチレストランは、案の定私には場違いな上品な店だった。

一度の食事になぜこんなにたくさんのフォークやナイフを使うのか。

< 266 / 732 >

この作品をシェア

pagetop