インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私が心の中で頼りない決意の雄叫びをあげていると、谷口さんが私の肩を叩いた。

「夏目先輩、何やってるんですか?あみだくじの場所を選ぶの早い者勝ちだったんで、もうここしか残ってませんよ」

「あ……うん、あみだくじね……」

男女の席が交互になるように、男女別のくじを作ったようだ。

尚史は相変わらずまったく興味なさそうに黙々と五目焼きそばを食べている。

あの神経の図太さが心底うらやましいと思いながら、楽しそうにあみだくじをたどっている谷口さんの指先を眺めた。

おお、爪に小さな花が咲いている。

さすが今時のおしゃれ女子は指先までおしゃれを怠らないんだな。

おしゃれに関心もなく美容関連の情報にうとい私とはえらい違いだ。

私なんか浴用石鹸で洗顔して、ドラッグストアで買った安い化粧水とオールインワン美容液でスキンケアを済ませているというのに。

誰かに手っ取り早く見初めてもらおうと思ったら、やっぱり第一印象は大事だろうから、私もこれからはもう少しくらいは服装や化粧にも気を遣うべきか。

合コンなんて慣れない場に来ると普段は気にならないことが気になるものなんだと知る。

あみだくじで決まった私の席は一番左端だったので、合コン的にはハズレの席なんだとは思うけど、両サイドを初対面の男性に固められなくて良かったと少しホッとした。

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