インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「それでは私はこれで……」

「私は送ってあげられないけど、外で待ってるから」

「……はい?」

言っていることがよくわからないなと思いつつ、乱れた髪や衣服を手早く整え鞄を持って玄関を出ると、長い影が私を覆った。

驚いて横を見ると、なぜか尚史が壁にもたれて立っていた。

「えっ……?なんで……」

『なんで尚史がここにいるの』と私が言い終わる前に、尚史はこちらに手を伸ばして私を引き寄せ強く抱きしめた。

「俺はモモ探知機だからな。それにモモのことは俺が守るって言っただろ?」

「……うん……ありがと……」

何がなんだかわけのわからないことばかりだけど、尚史の顔を見たらホッとして、助けに来てくれたことが嬉しくて、止まっていた涙が尚史のあたたかい腕の中でまた溢れだした。

「無事か?」

「なんとか……。でも、すごく怖かった……」

「やっとわかったか、バカモモ」

尚史は私の頬を伝う涙を親指で拭って、ワシャワシャと頭を撫でた。

そして優しく私の手を握る。

「帰るぞ」

「うん……」

尚史に手を引かれて歩いているうちに、八坂さんに迫られてついさっきまで抱いていた恐怖と不快感と嫌悪感が、私の中からゆっくりと消えていくのがわかった。

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