インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
未遂に終わったから良かったようなものの、尚史の言う通り、結婚詐欺になんてあったら笑い事では済まされないのだ。

「おばあちゃんに花嫁姿見せてやるんだろ?」

「うん……」

「おばあちゃんは俺とモモの結婚式に出たいって。俺もおばあちゃんと約束しちゃったしな。やっぱ約束はちゃんと守りたいし、後悔したくないじゃん?」

尚史が光子おばあちゃんのことを大事に思ってくれているのは本当に嬉しい。

だけど結婚どころか付き合うのもめんどくさいと常々言っていた尚史を、私のわがままに巻き込んでしまってもいいのだろうか。

「モモ、良かったじゃない! 尚史くんの気が変わらないうちに、これ書いてもらいなさい」

母は私の気も知らず興奮気味にそう言って、バッグから取り出した紙切れをテーブルの上に広げる。

「おおぅ……こ、これは……」

「婚姻届よ。買い物のついでに貰ってきたの。用意しとけって、今朝あんたが言ったんでしょ?」

「そうだった……」

あの短時間でよく準備できたものだ。

チャリを使わせたら圧倒的な強さを誇る主婦パワーに脱帽する。

もしかしたら地球を回しているのは主婦の底力なのでは?

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