インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
おまけにいつもと違って、会話もまったく弾まない。

いつもは楽しいはずの尚史との食事が、今日はとてもしんどくて、早くこの店を出たいと思ってしまう。

食事をするだけで気疲れしてしまうなんて、八坂さんとイタリアンやフレンチのレストランに行ったときみたいだ。

今までは尚史とどこで何を食べても、こんな風には思わなかったのにな。

尚史はそんな私の気持ちには気付いていないようで、いつものように目の前に並んだ料理をペロリと平らげた。

「谷口さんのオススメ、美味しかった?」

食後のミルクティーを飲みながら尋ねると、尚史はコーヒーにミルクを入れてかき混ぜながら首をかしげた。

「うーん……味はまあまあかな。それより全然食い足りない」

「だろうね」

大食いの尚史なら、若い女子向けのこの店の料理の量だと3人前は余裕でいけるだろう。

「他の料理注文する?」

「いや、ここはもういいや。まだ行きたいとこあるから」

いつもは何に対しても無気力で無関心なのに、今日の尚史はひと味違うらしい。

行き先をハッキリとは言わず『行きたいとこ』と曖昧に濁すということは、私にはまだ内緒にしておきたいのかな。

なんにせよ、確実にキヨの店ではなさそうだ。

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