インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史はニコニコ笑いながら部屋の中に戻って来た。

その嬉しそうな顔が『駄菓子屋の隣に住みたいという夢が叶った無邪気な小学生』みたいでちょっと可愛くて、つい笑ってしまう。

「本木さん、ここに決めます!」

「ありがとうございます!では早速店に戻って、契約手続きをさせていただきます!」

この部屋でもうすぐ尚史との新婚生活が始まるのだと思うと楽しみで、その日が来るのがとても待ち遠しくなった。


それから駅前の不動産屋に戻って、契約手続きをした。

書類の提出や敷金の入金などの手続きが済めば、すぐに入居できるそうだ。

不動産屋を出たあと、古本に寄ってから私の家に帰った。

マンションの賃貸契約手続きをしたことを両親に話すと、役所でもらう必要のある書類と敷金は、明日母と洋子ママが一緒に出かけるついでに用意しておくと言ってくれた。

「必要なお金は全額出すから心配しなくていいわよ」

世間の私たちと同世代で結婚する人たちは、親からどれくらい結婚資金の援助を受けているんだろう?

約束だったとは言え、結婚資金を全額親に払ってもらうというのは、大人としてなんとなく恥ずかしい。

< 450 / 732 >

この作品をシェア

pagetop