インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
新居に着くと、玄関の鍵が開いていた。

尚史はもう来ているようだ。

私がドアを開けて中に入るなり、リビングから尚史が飛び出してきて、いきなり私を抱きしめた。

その力があまりに強かったものだから、私は「ぐえっ」とカエルのような声をあげてしまう。

「ぐ、ぐるじい……」

尚史の腕の中で潰されかけたカエルのようにもがくと、尚史はあわてて手の力をゆるめる。

「ああっ、ごめん!大丈夫か?!」

尚史は心配そうな顔をして私の背中をさすった。

体の大きさも力の強さも全然違うんだから、全力で潰しにかかるのはやめて欲しい。

「何?いきなりどうしたの?」

「来なかったらどうしようかと思ってたから、来てくれて良かったって……つい」

どうやら尚史は、昨日の一件で私が尚史のことをイヤになって、新居に来ないのではないかと不安に思っていたらしい。

尚史が進行形で水野さんと関係を持っているなら話は別だけど、ゆうべいろいろ考えているときも、私は一度も尚史をキライだとかイヤだとは思わなかった。

私の中に複雑な気持ちがあることは否めない。

だけどやっぱり私は尚史が好きだし、二人で幸せになりたいと思う。

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