インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史は床に両手をついてうなだれる私の体を抱きしめて、大きな手で何度も何度も私の頭を撫でた。

「ごめん……。こんな風にモモを泣かせたかったわけじゃないのに……。元々悪いのは俺だけど、俺はずっとモモのことが死ぬほど好きで、モモに知られて嫌われるのが怖かったし、モモを守るためにも水野の言う通りにするしかなくて……」

尚史の腕に抱かれながら、酔ってぼんやりする頭で、それはどういう意味なのかと考えた。

尚史は一体どんな悪いことをして、私に何を知られたくなかったんだろう?

私を守るためにって、どういうこと?

それはわからないけれど、尚史は昔から私のことが死ぬほど好きで、私に嫌われたくないと思っていたことだけはわかった。

水野さんの言っていた通り、少し前までは私が尚史を仲の良い幼馴染みだと思っていたことも、尚史の気持ちに気付かなかったことも事実だ。

でも今は私も尚史のことが好きだから、誰にも尚史を譲る気はないし、何人(なんぴと)たりとも尚史の肌に指一本触れさせる気なんてない。

私と結婚する前に尚史が誰と何をしていようが、尚史はこのさき一生私だけのものだ。

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