インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
ビールを飲んでいた尚史がハッキリとわかるくらい顔をしかめた。

私と尚史の間では一応解決したことだし、もう水野さんの話には触れたくないんだろうなとは思ったけど、兄者が仕事の合間に時間を作ってまで話したいことなのだから、聞いておくべきだろう。

「店を出たあと、水野と尚史の間にあったことはだいたい聞いた。俺は全然知らなかったから、正直かなり引いたけど……」

「だろうな。俺は二度と会いたくなかったし、思い出したくもないよ」

尚史は苦虫を噛み潰したような顔をして、小皿の上の柿ピーに手を伸ばす。

「そのこと、モモさんは?」

「全部話した」

「じゃあ気兼ねなく話せるよ。ホントは尚史には黙っててくれって水野に言われたんだけど……水野は尚史が嘘ついてるのわかってて京都に行ったんだって」

「……え?」

「どうしたって尚史の恋人にはなれないのはわかってたけど、もう元の友達にも戻れないし、好きだから離れたくないって気持ちが勝って、卑怯な手を使って尚史にしがみついてたって。でも尚史がどうにかして水野から離れようとしてるのがどんどんつらくなって、今度こそきっぱりあきらめようと思って、騙されたふりして京都に行ったんだってさ」

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