世界No.1の総長と一輪の花
「ふっ、冬樹くんっ…!」
タクシーの中で、ぼーっと窓の外を眺めていたら急に冬樹くんが私の手に自分の手を重ねてきたんだ。
「昔は手、繋いでお祭りデートしただろ?」
本当に昔の話。5年くらい前からだったか……私が小学6年生の時に、初めて冬樹くんと夏祭りに行ってそれからは毎年恒例のように一緒に行くようになった。
毎年恒例と言ってもそれが3年間続いただけだけど……
それから私のお母さんが亡くなって、冬樹くんも姿を消したから……
「デートじゃないもんっ」
あれはただお祭りに行っただけだ。デートなんて意識したことない。
「こうすると花はいつも顔赤くしてたっけ」
そう言って冬樹くんは私の指の間に自分の指を絡めてくる。
「冬樹くっ……」
これは"恋人繋ぎ"と教えてもらったもの。だから恋人以外するのは嫌だ……
パシッ
絡んできた指が嫌で……私は手を振り払った。