W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
静香を見つめそう言うと、冷めた目を奈津子に向ける。

「あれは…梗ちゃんに乗せられて…私だってちゃんと涼ちゃんのこと見てたわ!」

「昔の事を持ち出すなよ。もう終わったことだ」

「終わってないわ!無理やり終わらせたのは涼ちゃんでしょ!」

立ち上がり叫ぶ奈津子を城ヶ崎社長が宥める。
終始無言で様子を見ている総裁とはらはらした顔のご両親。
まるで二人の会話は痴話喧嘩のようで呆気にとられていた。

「涼月くんどうだろう、少し奈津子と話し合ってくれないか?その、もう一度結婚を考え直しては…」

「おじさん何を言ってるんですか?彼女の前でよくも言えますね!奈津子の事はもう終わったことです!いまさら何を話せって言うんですか!」

静香の肩を強く抱き、語気を荒げて城ヶ崎社長と奈津子を睨む涼月口を噤む二人。

私の存在がこの状況を作っている…?

涼月は無理して拒んでる。
本当の気持ちは…。

「涼月、落ち着きなさい。静香さん、といったかな?君はどう思っている?涼月と結婚したいかね?」

それまで黙っていた総裁が重々しい声色で静香に問いかけてきた。
静香は涼月の手をやんわり除けて、震え上がりそうな脚を叱咤するように姿勢を正し、真っ直ぐに総裁と目を合わせた。

「私は…、私は結婚できなくてもいいんです」

「し、静香ちゃん?」

困惑した涼月が声を上げる。

「私は元々結婚なんて考えてなかった。涼月さん、意地を張って無いで奈津子さんとちゃんと話し合ってください」

「な、何を言って…」

絶句する涼月を見上げ、はっきりと言った。

「さっきの会話はまるで痴話喧嘩みたいでしたよ。今の涼月さんはただ意地を張って駄々をこねてる子どもみたいです。素直に、自分の想いを奈津子さんにぶつけてください。」

キッと見上げる静香から気まずく目を逸らした涼月は少し顔が赤い。
ククッと忍び笑いをする父の春月。

「静香さん、あなたはそれでいいの?」

心配そうに母のすみれが優しく問いかける。

「はい。私は、涼月さんと奈津子さん。…それに、…梗月さんの幸せを願ってます。そこに私がいなくてもいいんです」

はっきりと、固い決心を言葉に込め頷いた。

「静香ちゃん…」

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