W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
涼月が呟いた後、シーンと静まり返る室内。
静香は目を瞑り何か考えているような総裁の姿を見て次の言葉を待った。
そこへバタバタと足音と、「坊ちゃま!」という声が聞こえ、バタンと勢いよくドアが開いた。
驚いて振り返るとそこには居るはずの無い人の姿が。

「梗‥月さん?」

目を見開き驚く面々。
息を弾ませズカズカと入ってきた梗月は静香の腕を掴むと引き寄せた。
抗えずに梗月の胸に飛び込む形になった静香は混乱し、そして、懐かしい香りに安心した。

「ごめん、涼、やっぱり静香はやれない」

「梗・・・」

涼月の傍でそう言うと、呆気にとられてる面々に頭を下げた。

「突然すいません、説明はまた後でします。失礼します」

そう言って静香の腕を引き部屋を出てしまった。

「梗月!」

父春月の咎めるような声が聞こえる。

なぜここに梗月さんが?それも攫うように私を連れ去ってどうしたというの?

嬉しい反面、しでかしてる事態に青くなりながらも、おろおろとしてる先ほど案内してくれたお手伝いさんの横を通り過ぎ、大股で歩く梗月に転ばないように付いていくのがやっとで何も言葉が出ない。
かすかに後ろから総裁の笑い声が聞こえた。

靴を履くのもそこそこに外へ出ると道の凹凸に足を取られる。

「あっ・・・」

ずっと腕を掴まれ引っ張られていたから転びそうになり、梗月に抱きとめられた。
イライラしてるのか、チッと舌打ちをした梗月を初めて見て、呆然としてるうちに膝裏に手を入れ抱き上げられた。

「きゃあっ梗月さん!?」

そのままずんずんと歩いていく梗月に慌てて降りようとする。

「きょ、梗月さん、あ、歩けますからおろしてください!」

「黙って。少しでも早くここを離れたい」

憮然とした顔でそう言うと先を急いだ。
黙口を閉じた静香は前を向く梗月の目の下に隈を見つけ少しやつれた横顔を見つめる。
たった2日会わない間に何があったというのだろう。
そっと、頬に触れると、ハッとした顔で静香を見る瞳。
その瞬間梗月が躓いた。

「きゃあっ」

「おっと、あぶねぇ…」

落ちないようにひしっと縋りつく静香を見てフッと笑い、よいしょっと抱き直すと、また歩き出す。
今日はいつもと違う言葉づかいや雰囲気に呆気にとられて言葉を噤む。
いつも静香が運転する梗月の車の助手席に乗せられ、どこに行くのか聞いても答えてくれず車は走りだした。

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