W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
静香が廊下を歩いていると前から二人の女性社員がやって来た。
すれ違うときにわざと肩をぶつけられて咄嗟に謝った。

「あ、すいません」

「ちょっと気をつけてよね!社長に付いて行くからっていい気にならないでよ!」

「…」

わざとぶつかって来たのは向こうなのに捨て台詞を吐き去っていく。
もう一人はクスクス笑っている。

「はぁ、後一ヶ月の我慢…」

ため息をつき歩き出す静香。
最近、社内の静香に対する風当たりが厳しい。

社長が秘書を連れて転勤。
結婚のことはまだ伏せているもののあまり前列が無く驚かれたが普段の静香の働きぶりを知っていてよほど気に入ったのだろうと、肯定するのがほとんどだった。

だけど、女性陣はそうはいかない。
静香は社長の恋愛対象じゃないと安心しきっていた社長ファンには寝耳に水で、まさか静香と社長は付き合ってる!?と勘繰り静香に詰め寄る始末。
なまじ本当に付き合ってるので誤魔化そうとしても曖昧になり、そのお陰で今や妬み嫉みのオンパレード。

女の嫉妬は恐ろしい…。
嫌がらせを受ける毎日で、先ほどのように小突かれたり影口叩かれたりがほとんどだったのでまだ耐えられていた。

「梗月さんが心配するからこれくらいのことで話すことはできないな……。」

独りごちる静香。
今まで自分と一緒にいることで静香が嫌な思いをするのではと心配して距離を取っていたという梗月は、付き合うことになってからも会社では変わらない態度だったが、ことある毎になにか無いか?嫌がらせはないか聞いてくるようになった。

「僕が必ず守るから、何かあったら直ぐに言って?」

心配そうに顔を覗き込む梗月に本当は相談した方がいいかもしれないが、急な転勤の為に引き継ぎなどで静香よりも忙しくなってしまった様子を見ると言えないでいた。

まだ耐えられる。梗月さんと一緒にいるためだ!これくらいじゃ負けない!

静香は一人拳を握って気合いを入れた。
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