W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
静香が残業をして家に帰ったのは9時過ぎ。
梗月はまだ残業中。
疲れた体を引きずってソファーに座る。

ここは梗月の家。
本郷邸から帰った時に静香は転勤の話をされ、一緒に行くのだからと梗月の部屋で一緒に住もうと言われた。
静香が喜んで返事をすると、それからの梗月の行動は早かった。

直ぐに静香の家に引っ越し業者を呼んで引っ越しをさせてしまった。
帰ってから2日目のことだった。
引っ越しは全て梗月が取り仕切ったので静香は何もすることが無く唖然と見てるだけだけ。
その日、涼月からも荷物が届き開けてみると、涼月の家に泊まったときに用意してくれた服などが3箱にもなって入っていた。
気に入っていたピンクベージュのスーツもある。

「こんなのわざわざ送って来なくてもいいのに。僕への当て付け?」

不満そうに憮然としていた梗月は全て捨てると言い出して静香は慌てた。

「待ってください梗月さん!折角だから着ます!これ、全部ブランド物で凄く高いんですよ!勿体無いですよ!」

不機嫌な梗月は僕が全部買い替える、静香の似合う物を自分が選ぶと聞かなかったが、なんとか説き伏せ渋々着ることを許された。

「涼月が選んだ物だと思うと妬ける…」

「服に罪は無いですよ?」

膨れる梗月が珍しく、可愛いと思ってしまった静香はにっこり笑って顔を覗き込んだ。

「今度また買い物行きましょうね?そこで梗月さんの選んだ服着ますから」

「…ああ、そうしよう」

やっと諦めた様子の梗月は静香を抱き寄せ微笑み、見つめ合いキスをする。

機嫌の治った梗月と服を片付け同棲生活は始まった。

その間に静香の実家に行って両親に挨拶もした。転勤で遠くに離れてしまうのは寂しがったが梗月との結婚を泣いて喜んでくれた。

仕事が忙しい中でも、時間があると梗月は本を読み静香はその横で転勤先の家を探す。
一緒に住むのだから静香の好きにしていいよと梗月は言うが、やっぱり一緒に決めたいと、時々梗月の読書の邪魔をしながら検索していた。

「ねえ、梗月さん。ここはどうですか?」

「ん?んん…」

本に夢中の梗月に静香は頬を膨らませ腕を揺する。

「梗月さん!聞いてます?ちゃんと見てくださいよ~」

「うん、今良いとこだから…待って…」

生返事の梗月に呆れて、もういい!と独りまた検索しようとしたら、腕がにゅっとお腹に周り引き寄せられ、気付いたら梗月の膝の間に座らされていた。
静香に覆い被さるようにまた本を広げ読み出す梗月。

「梗月さん……読み辛くないですか…?」

「ん?そんなこと無いよ」

「私は検索しづらいんですけど~?」

避けようと立ち上がろうとしたらがっしり押さえ込まれて立てない。

「だーめ。静香はここ」

そう言い静香のうなじにキスをする梗月にくすぐったそうに肩を竦める。

家ではこんな風にイチャイチャすることが多く、甘く豹変した梗月にたじたじの静香だったが、休日は家でまったりしたり、買い物に行ったり、映画に行ったりして普通の恋人同士のようにデートも出来て一緒の時間が持てるのもここに越してきたお陰だと静香は思っていた。
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