身代わり令嬢に終わらない口づけを
 それはともかく、その若い男性がレオンではないことをローズは不思議に思った。レオンに似ているが、彼よりも温和で優しい顔立ちの男性だ。

「この方は?」

 聞かれてローズの目線を追ったソフィーは、その先にある肖像画に気づくと困ったような顔になった。

「あの……ハロルド様です」

「ハロルド様? どういった方なのかしら」

「それは……」

  ☆

 その日の午後、ローズは庭のガゼボでお茶を飲んでいた。

 こんなに長い間ベアトリスの身代わりをするのは初めてだが、ローズはご令嬢の生活というものがつくづく自分の身に合わないものだと実感していた。

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