身代わり令嬢に終わらない口づけを
 戻る道すがらローズは、廊下に飾ってある代々の当主の肖像画を見上げていた。来るときは緊張していて、ゆっくり見るどころではなかったのだ。

 いかめしい顔をした年寄りの顔がずらっと並んでいるが、総じて造作は悪くない。貴族の顔を見たそのままに描くような気の利かない絵師はいないだろうが、それでも今までの公爵たちはなかなか見目好い顔をしていた。


 眺めながらつらつら歩いていると、最後にとびきり若い男性の肖像画が飾ってあった。隣にあるのが今会ったばかりの現公爵だったので、順番からすればおそらく次期当主だろう。

 肖像画をこのように飾る時は、節目の歳に描き替えるのが一般的だ。今は若い絵だが、そうやってかけ替えていき最終的に歴代の当主のように貫禄のある絵になるはずだ。

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