身代わり令嬢に終わらない口づけを
「お前のいるところがいい」

「な……なんですか、急に」

「公爵夫人になり損ねたな」

「もともとそんなものになる気はないのでかまいません」

「公爵夫人は嫌か?」

「私はただの侍女ですよ? なれるわけが……」

「可能性の問題ではない。お前の気持ちを聞いているのだ、ロザリンド」

 ふいに名前を呼ばれて、ローズは一瞬だけ口をつぐむ。


「……ローズでよろしいですと言ったではないですか」

 昨日、ベアトリスとそろってから、ようやくローズはレオンに自分の本当の名を告げることができた。それなのに、どれだけローズでいいからと言っても、レオンは頑なにその名前を呼ぼうとしない。
< 219 / 226 >

この作品をシェア

pagetop