身代わり令嬢に終わらない口づけを
「急な用事が入りましたの。結婚式までにはまいります」

 ひやひやしながらローズはレオンと言葉を交わす。

「ああ、お前の伯母を迎えにいっているのだったな」

 ローズが何も言わなくても、レオンは勝手に納得してうなずいた。

 本来ならこの場には侍女だって、なにより花嫁の両親のリンドグレーン伯爵夫妻だってそろっているはずだった。ローズが一人でここへ来る羽目になったのはひとえに、関係者総出で秘密裡にベアトリスを捜索しているためだ。


  ※

『頼む、ローズ』

 館の中にすでにベアトリスの影も形もないことを知ったリンドグレーン伯爵は、ついに途方に暮れてローズに言った。
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