身代わり令嬢に終わらない口づけを
ローズはあわててまたベアトリスの仮面をその顔にはりつけた。背筋を冷や汗が流れ落ちる。
「わたくしは忙しいのですけれど」
「そんなこと、メイドにやらせればいい」
「……自分の物を他人に触られるのが嫌なのです」
「ではなぜ、自分のメイドを連れてこなかったのだ? 確か連絡では、侍女が一人ついてくるはずだったのだが」
う、とローズは言葉につまる。
もともとローズが一人だけ、一緒にカーライル家に入る予定だった。カーライル家は、国でも指折りの名家であり、当然、使用人の数もリンドグレーン家とはけた違いだ。新妻となるベアトリスにも、専用のメイドがカーライル家で用意されている。そこにベアトリスの家から何人も侍女を連れて行くわけにはいかない。
「わたくしは忙しいのですけれど」
「そんなこと、メイドにやらせればいい」
「……自分の物を他人に触られるのが嫌なのです」
「ではなぜ、自分のメイドを連れてこなかったのだ? 確か連絡では、侍女が一人ついてくるはずだったのだが」
う、とローズは言葉につまる。
もともとローズが一人だけ、一緒にカーライル家に入る予定だった。カーライル家は、国でも指折りの名家であり、当然、使用人の数もリンドグレーン家とはけた違いだ。新妻となるベアトリスにも、専用のメイドがカーライル家で用意されている。そこにベアトリスの家から何人も侍女を連れて行くわけにはいかない。