身代わり令嬢に終わらない口づけを
「実は、こんな雰囲気は俺も苦手だ。そう言ってもらえると、俺としては大変助かる」

「まあ気が合いますわね。私もですわ」

 柔らかい表情になったローズを、レオンは目を細めて見る。

「お前は……」

「レオン様」

 その時、エリックがレオンを呼んだ。見れば、サロンの入り口に別の執事が立っている。

「なんだ」

「お話中申し訳ありません。少しよろしいですか」

「すまない。父の執事だ。少し席を外す」

 レオンがローズに言って、足早にその執事に近づく。入れ替わりにエリックがローズに近づいてきて小さく言った。

「あまり私の主をいじめないでやってください。あれでも、あなたの気をひこうと一生懸命なのですよ」
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