身代わり令嬢に終わらない口づけを
 もしこの執事の及第点に届かなければ、きっとなにかどうかの理由をつけて追い出されることだろう。

 ローズとしてはそれでもかまわないが、それではベアトリスを始め伯爵家に傷がつく。

 また一つため息をつくと、ローズは言った。

「まだここに来て日の浅いわたくしの言うことではないでしょうが……レオン様が真面目で実直な方だということはなんとなくわかります。そんな彼にはきっと、あなたのような執事が必要なのでしょうね」

 その言葉にエリックは片方の眉をあげたが、何も言わずに頭を下げて後ろに下がった。飲み物のグラスを二つ手にしたレオンが戻ってきたからだ。その一つを、ローズに渡す。

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