身代わり令嬢に終わらない口づけを
 ローズは軽く目を見開いてから、笑った。

「はい、喜んで」

 そのローズを見て、レオンが目を瞬く。

「ようやく、笑ったな」

「今まで笑い方を忘れていたようです」

 すまして言えば、レオンも楽しそうに笑った。

「そうか。仏頂面よりも、その顔の方がずっといい」


(そういうときは、その方が綺麗ですよ、くらいは言えたらいいのだけれど……これがきっと、ありのままのこの人の言葉なのね)

 視界の端に肩をすくめるエリックの姿をとらえながら、愉快な気持ちでローズは差し出されたレオンの手をとった。


  ☆

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