ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
ん?
どこかから、こそこそっと自分の名前を呼ばれ、口を閉じる。
何? どこから?
キョロキョロと店内を見渡せば……葉を広げた観葉植物の陰に隠れるようにして、ラムちゃんが小さく手を振っている。
「ラムちゃん、どうし――」
しぃいっと人差し指を振られてしまい、再び黙る。
「あれ、お前の部下だろ。何やってんだ?」
「さぁ……」
そろって首をひねる私たちの前で。
イキナリ、ラムちゃんの身体がガバァっと床に倒れ伏した。
「ラムちゃんっ!?」
気絶でもしたのかと思ったら……違うらしい。
もぞもぞっと動き出したかと思うと、そろりそろり……周囲のお客をフリーズさせながら、床を這って近づいてくる。
匍匐前進ってやつ?
今度の推しキャラは、忍者かスパイなのかもしれない。
パンツスタイルだからいいようなものの……
ドン引きしながら見守る間にも、ラムちゃんは少しずつ前進。
私たちのテーブルの下に潜り込んだ。
「ラ……ラム、ちゃん?」
「窓の外、こっそり見てください」
下からひそひそと声がする。
「「外?」」
「こっそりですよ! さりげなくですよ!」