ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
新条の言う通りだ。
余裕ぶってはいても、実のところ、気持ちは焦るばかりだった。
飛鳥は今後も、僕を徹底的に避け続けるだろう。
会社も違うし、正攻法だけでは話すどころか、まともに顔も合わせられない。
まずは罠を張り巡らせて、彼女との接点を再び増やしていくしかない。
けれどその間に彼女と矢倉の仲がさらに深まってしまったら、と考えると、ジリジリと嫉妬に炙られた身体が疼いてしまう――
「和馬、あたしからもお願い。散々女泣かせてきたライアンが、たった一人に振り回されてるなんて、いい気味、自業自得よざまあみろ、って愉快に思わなくもないけど」
はぁ? 何だって?
「一応、基本的にはいい奴だし、友達だし、応援してあげたいの。ね、お願い!」
一応、ってなんだ。基本的?
男に騙されて、行き倒れてたところを救ってやった恩をもう忘れたか!
眉間に寄っていく皺を意識したけれど、それでも援護には違いないので、黙っておく。
新条は……何を考えているんだろう。
無言のまま、スマートな仕草でゆっくりとワイングラスを回している。
そしてたぷん、と揺れる深紅の色にじっと目を据えたまま、口を開いた。
「協力してやりたいとは思うが、今真杉の負担は増やしたくない、ってのが正直なところだ」