ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
僕らの会話を聞いていた新条は、額に手をあてて、くつくつと笑い出した。
「なるほど、必死か」
「ええ、そういうことです。できれば今後、うちが関わる御社との仕事、窓口を飛鳥に一本化していただけると、さらにありがたいのですが」
「それは難しいな。最近は随分お前の所に任せてるから、あいつ一人でカバーするのは無理だ」
「では、できるだけで結構です」
畳みかけるように言うと、新条は「おいおい」と呆れたように肩をすくめる。
「ワイン1本でどこまで俺を懐柔する気だ?」
「まさか」
僕は首を振り、とある画面を表示させたスマホをテーブル上、新条の方へと滑らせた。
「これは?」
「世界50か国以上、100か所以上の海外拠点を持つ外資系企業の中で、今現在御社と取引きがなく、かつ僕が紹介できる所のリストです。CEOの好みのワイン、葉巻の銘柄、趣味などの情報もお付けしますよ」
もちろん、交渉時の通訳もやりましょうと続けると。
新条がグラスを持っていない方の手を、「わかったわかった」と軽く振った。
「お前が相当切羽詰まってるってことは、理解した」
「わかっていただけましたか。よかった」
僕は微笑み、椅子に背中を戻す。