ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「ほんと、災難だったわねー」

隣のダイニングから聞こえてくる女性の声に、
「年明け早々ついてないです」ってリビングのソファから返事を返す。

そこへ。
「湿布、足りますか?」

と顔をのぞかせたのは、ざっくり編みの黒ニットを着た男性だ。

印象的なアーモンドアイを持つ爽やかなこのイケメンは、この家の持ち主で、吾妻拓巳(あづまたくみ)さん。ライアンの大学時代の友達で、彼が現在勤める会社・カレントウェブプランニングの社長さんでもある。

婚約後、拓巳さんとその奥様、奈央(なお)さん、2歳になる愛娘の優羽(ゆう)ちゃんに紹介してもらい。以来、食事に誘ったり誘われたりと、親しくさせてもらってる。

今日は、少し遅めの新年会、という名目でおよばれしたんだけど。
思いがけないアクシデントで、挨拶もそこそこに治療中、というわけ。

「足りる。足りるから、見るなよ。飛鳥の美しい足」
「ちょっとライアンっ!」

「ぶっ……はいはい、邪魔はしないよ」
爆笑した拓巳さんが、ダイニングへと戻っていく。

「もおっ」
目の前、私の足へとかがみこむライアンを睨んだ。

「何?」

素知らぬ顔で言った彼が、私の足首へぺたりと湿布を貼り付ける。
すぐにひんやりした感触が伝わり、ふぅっと肩のこわばりが溶けていく。

心地よさに浸りつつ、ふかふかのソファにもたれて視線をあげれば、解放感たっぷりの白く明るい天井が映った。

吾妻家は、ログハウス風の一軒家だ。
高い天井には、がっしりと太い梁が通っていて、安定感とぬくもりを感じさせる。

やっぱり一軒家って落ち着くかも。
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