ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

出会った時はホテル住まいをしてた彼だけど、当初疑っていた通り、それは“仕事用”のもので。
目白にある高級マンションに、ちゃんと部屋を持っていたのよね。
婚約後、私がそこに転がり込む形で同棲がスタートして……

今のマンションでも部屋数は足りるし、私は結婚後もこのままで構わないと思ってたけど。
ライアンは、どう思ってるんだろう?
子どもが生まれたら、とか……

なんて、ぼんやりと考えていたら。
いきなり素足に温かな温度を感じて、びくっと上半身を跳ね起こした。

「力抜いて。早くよくなるように、マッサージするだけだから」

大きな手でじっくり、包み込むような動きでもみ込まれて、
その動きに官能的なものを感じてしまい、肌が粟立つ。

つま先から踵、アキレス腱からふくらはぎまで。
彼の手が触れる部分へ、急速に感覚が凝縮されていく。

「ちょっ……そこ、は……関係ないっ……」

そこは昨夜、彼が触れたところだ。
指先で、唇で、舌で……散々……

やややや……
なっ何を妙なこと思い出してるの、私っ!

ただの、マッサージなのに……っ

「っ……」
呼吸が怪しくなる。

やだこれ、まずい。ダメだ、やっぱり無理。
やめさせなくちゃ。
そんな風に触れられたら……

私はきゅっと、羞恥に耐えるように唇を噛んだ。

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