ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
社内の専用スペースでパソコンに向かっていた僕は、壁の時計が20時過ぎであることに気づき、手を止めた。
ガラス越しに見渡す限り、大半の照明が落ちていてフロアに人影はないみたいだ。
プライベートが充実してこそ、いいパフォーマンスができる、という拓巳の方針が徹底してるせいか、うちはみんな、抵抗なく定時退社をしていく。
日本人は働きすぎだといつも僕は思ってるから、こういう所、飛鳥の会社も見習ってくれるといいんだけど。
手持ちの仕事は大体終わったし……
僕もそろそろ帰ろうかと考え、その前に、とメールボックスをチェックすると。
張からのものが目に留まった。
英語でまとめられたそれをざっと流し読む。
内容は、父さんの会社の経営状況とその改善策についてのアドバイスをもとめるものだった。
このところ、張とはよくそういうやりとりをしてる。
実は最近父さんの会社、あまり業績が振るわないんだ。
それで無理をしてしまったせいもあるんだろう、彼が倒れたのは。
大丈夫だって笑ってたけど、親子だからわかる。
結構参ってるってこと。
何かさせてくれと頼みこんで、時々こうやって、張を通じて経営に口出しさせてもらうようになった。
恩返し、っていうつもりはないけど、今の僕なら何か手伝えるんじゃないかと思ったから。