ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「顔、トケてるぞ」
揶揄うような声を無視して、中を開く。
『今日は柴田さんと飲みにいきます。ゴハン、作れなくてごめんね』
がーん……
みるみる、テンションが下がる。
僕が犬だったら、間違いなく耳もしっぽも、しゅんと垂れてるに違いない。
せっかく仕事、早く終わるように調整したのに……
柴田さん、っていうのはクライアントの女性だろう。
ああいう女性になりたいってよく話してくれる人だから、僕も名前だけは知ってる。
男と飲みに行くなら、僕も乗り込んでいくところだけど。
女子トークを邪魔するほど、心が狭いとは思われたくない。
『OK,enjoy!』
返信して。
そっけなかったかと、スタンプも一緒に送っておく。
「拓巳、イタリア視察団の誘致提案レター、今日中に作っておくよ」
「え? あれは別にそんなに急がなくてもいいけど」
「飛鳥が今夜、飲み会で遅くなるんだ。早く帰ってもつまらないから」
言った途端、「おお」と拓巳とナディアがそろって目を丸くした。
はいはい、前の僕とは別人だって言うんだろ。
ため息交じりに、携帯をジャケットに戻した。