甘い罠に囚われて
そんなことが何度かあった後、今ではKAKERUは私の部屋に出入りする様になっていた。

稽古場から近いって事もあるんだろう。

泊まって行く事もある。

けれどーーー

私とKAKERUは男女のそういった一線は超えていない。

キスはされた。

うちに来るようになって何度めかの時に。

部屋に上がるやいなや深く深く口付けられた。

ぼぉっとする頭でああこのままKAKERUに抱かれるのかと思いきや、KAKERUはその後、私を抱き枕の様に抱え込み眠った。

もうその時点でKAKERUの意外にも真面目に仕事に取り組む姿勢、プロ意識の強さ、時折見せる優しい表情にすっかり心を奪われていた私は例えKAKERUに私への気持ちが無くても良いからと覚悟を決めていたのにーー

拍子抜けした。

突然にふらっと私のところへやって来てはキスを交わし眠るだけ。

出会って三ヶ月以上も経つというのに未だKAKERUの家どころか連絡先すら知らない私はただ一方的に彼が来るのを待つばかり。

思わせぶりにキスをしては私を抱き寄せ眠るKAKERU。

やはり今夜も私の心に月の明かりも星の煌きも届くことはない。

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