三坂くんはまちがってる



「うわ〜 まじかよ俺一番前のど真ん中」

「佐藤どんまいw」

「うそ〜〜わたし三坂と超離れた!」

「うちもうちも!ショック〜

誰か変わってよ〜!」


喜怒哀楽ごちゃまぜの声が耳に入ってくる。

嫌な予感は、まだ消えない。

本を読んでても 全然気が紛れなくて
持つ手が少し震えた。


どんな席になっても
私は今まで通り 誰ともかかわらない。絶対に、絶対。


不意に、
本の向こうに人影が写った。

チェックの短いスカート。

甘ったるい女子の匂いだ。



「山田さん…だっけ?」


顔を上げると、
たしか井上さん…が私を見下ろしていた。


あの放課後の日、
三坂くんと一緒になって話してたパリピ女子だ。



私は身構えた。



「山田さんの隣、三坂だったんだけど〜

そんな仲良くないっしょ?変わってくんない?」



「え…」



人づてに聞いてしまった私の隣。


やっぱり、赤崎先生は仕組んでたんだ。


「うちの席、後ろから2番目だし

ど真ん中の席より断然いいでしょ?ね?」



私の席ど真ん中だったんだ。

それならできるだけ後ろに行きたい。

三坂くんとも隣でやっていくなんて絶対に無理。

井上さんに了承の意を伝えようと口を開けた、

その直後だった。






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