三坂くんはまちがってる
「井上はもう仲良いから変わる必要ねえわ」
横から現れた、
もう話すこともないと思っていた人。
「三坂! …でもさ〜、山田さんだよ?」
チラリと私を横目に見る井上さん。
言わんとしていることは分かる。
三坂くんは私のことが嫌いだ。
隣の席になるかもしれないのに、変わらなくていいの?
そんな風に訴えかけるような言葉だった。
「井上、分かってる?
お前の席の前 矢口だろ」
「え?!」
瞬間、井上さんの目の色が変わった。
「やっぱり気づいてなかったんだろ〜
それこそお前、山田と変わっていいわけ?」
「ごめん!ちょっと聞かなかったことにして」
パシンっと両手を合わせて
井上さんは眉を下げると
その場から早歩きで去っていった。
矢口…というのは多分、
矢口まさるくんのことで
同じクラスの、サッカー部の男の子だ。
そっか、井上さんは
矢口くんのことが好きなんだ。