あなたの青 わたしのピンク
隣りに並ぶ女性の顔が夕闇ではっきりと

見えなくなった

列の前にスタッフが立ち

入場開始の説明を始めた

周りにほっとした空気が流れ

愛果は皆と一緒にゆっくりと人の動きに

流され入場をした

入口でチケットを確認してもらい

カウンターで飲み物を確保する

ロビーはライブへの期待に嬉しそうな会話で溢れていた

愛果は一人ロビーにあるロッカーに荷物を預け

あたたかな照明で照らされた会場に入った

整理番号から入場が真ん中だったので

会場に集まった人達の後ろに並ぶと

丁度よい場所に立つことができた

初めて来る会場だったけど

とても広い会場だった

舞台には既に楽器や機材が並んでいる

ハルと出逢ったライブハウスとは

全く違っていて愛果は正直とてもドキドキした

勿論愛果が演奏するわけでもないのに

ハルのこととなるとまるで自分のことの様に感じてしまう

良いこともそして悪いことも

演奏が始まる前の舞台を行き交う人を見れば

この人達はハルと仲良くしてくれてるのだろうか

そう考えてしまう

舞台の両脇に大きなカメラを持ったカメラマンを見つけた時は

少し身震いがしてしまった

ハルは一体どこまで行ってしまうのだろう

その気持ちは心に薄い影となって愛果の心を覆った
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