初恋の花が咲くころ
「本当にごめん!!」
待ち合わせのランチ時、カフェテリアの端の席で額にテーブルを付けるようにして咲は謝った。
「電話で悪口言ってたこと、編集長に言っちゃった…」
「え?別にいいよ」
長い付き合いだというのに、ここまであっさりした返答が返ってくるとは予想だにしていなかった。
「え?」
ぽかんとした顔が出ていたのだろう。あやめは笑いながら言った。
「そんなこと気にすると思った?悪口の一つや二つ、言わない人なんかいないでしょ。それで首切られたら、それこそ訴えるわよ」
「え…」
そんなアッサリ、許してくれるとは思ってもいなかった。
「もう、そんなことをずーっと悩んでたんでしょう?午前中」
「うん…」
下を向いた咲を、もう可愛いんだから!とテーブル越しに抱きしめるあやめ。
先ほどまで緊張していた心が少しづつほぐれていくのが分かった。
「今日、早く終わったら飲みに行こうか?」
若干涙ぐんでいる咲の頬を撫でながら、あやめが優しく言った。
咲は笑いながら「今日は飲み過ぎないでね」と言い返す。

そんな二人を見つめている人がいた。
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