初恋の花が咲くころ
「いっそ止まればいいのに」
天井を見つめながら、咲は呟いた。
「なんて、こんなんで人が死んだら凄いわ」
日曜の午後、やることもなく暇な一日を過ごしていた咲は、テレビもつけずベッドの上でゴロゴロしながら、休日を満喫していた。しかし、あの言葉がずっと忘れられない。
「でも、よく考えたら、二人でご飯とか、普通だよね。何を動揺したんだ…」
なぜか独り言が止まらない。
その時チャイムが鳴った。
基本的に日曜は家で過ごすと決めている咲は、息をひそめ居留守を使おうとした。しかし、ガチャガチャと鍵を開ける音がして、誰かが入ってきた。
「咲~」
上下スウェットというラフな格好で、休日スタイルのあやめがやって来た。デートに適した格好ではないことは確かだ。心のどこかでホッとしている自分がいる。
「もう、お寝坊さんっ」
あやめスタイルの挨拶、心ゆくまでハグを、されるがままにしたあと、咲は聞いた。
「どうしたの?休日は、終日ゲームじゃなかったっけ?」
こう見えてあやめは、とんでもないゲーマーだ。土日は忙しいと誘いを断るのは基本的にゲームを夜通しやりたいがためだ。
「咲に話があって」
「あ、そういや、私もあったんだ」
2人のデートのことで頭がいっぱいだった咲は、あやめの言葉を聞いて先日見た新入社員について伝えるのを完全に忘れていた。でもここに、あやめがスウェットでいるということは、おそらく編集長はあやめを誘えなかったに違いない。
「じゃあちょっと待って。コーヒー入れる」
咲はベッドから体を起こし、やかんに火をかけにキッチンへと向かった。あやめも咲に続いてキッチンへ入り、買ってきたケーキ用にお皿とフォークを用意する。
「今回も大量買いしたね」
二人分とは思えないような量のケーキを箱から取り出しているあやめに向かって咲は苦笑いする。
「本当羨ましい、その体」
「そう?咲用にビターチョコケーキとティラミス」
「やったー!」
寝起きからスイーツが食べられる自分の胃袋に感謝しながら、咲は二人分のマグカップを持って、床に座った。
「どうぞ。それで、話って何?」
既にロールケーキ一切れを食べ終わっているあやめにケーキのお礼を言いながら、フォークを手に取る。
「うん…。昨日、編集長に告白された」
「ぐふっ」
思わず鼻からチョコレートが出そうになった。
「え、え、え?」
まずはご飯からじゃなかったの?一体あいつは、どんな思考回路してんだ。
見た目とか気にしていたくせに、そこは一足飛びか!
咲は自分が、だんだんと編集長の株があやめの中で下がってはいやしないかと心配になってきた。元はと言えば、編集長の恋の応援をするつもりで色々やってきた訳だし、とにかくここは自分の気持ちを奥底にしまって鍵をかけておこう。
「それで、あやめは…?」
おそるおそる尋ねる咲に、あやめはため息をついて言った。
「保留。まだよく知らないし、相手のこと」
「実際、編集長のことどう思っているの?」
「前よりは、良くなったと思う」
これはイイ感じかもしれない。あやめが異性を褒めることはあまりない。もう少しだ。
「好印象なんだ?」
「まあね。ってかさ、いいの?咲は」
急に話を振られて咲はギクッとした。
「何が?」
「私が編集長と付き合っても」
付き合う、という言葉がいやに生々しく、先ほど鍵をかけたのにあの感情がまた出てきそうになる。
「も、もちろんだよ。なんで?」
「別に。咲がそう言うなら、いいんだけどさ」
それ以上あやめは、それについて言及することはなかった。
天井を見つめながら、咲は呟いた。
「なんて、こんなんで人が死んだら凄いわ」
日曜の午後、やることもなく暇な一日を過ごしていた咲は、テレビもつけずベッドの上でゴロゴロしながら、休日を満喫していた。しかし、あの言葉がずっと忘れられない。
「でも、よく考えたら、二人でご飯とか、普通だよね。何を動揺したんだ…」
なぜか独り言が止まらない。
その時チャイムが鳴った。
基本的に日曜は家で過ごすと決めている咲は、息をひそめ居留守を使おうとした。しかし、ガチャガチャと鍵を開ける音がして、誰かが入ってきた。
「咲~」
上下スウェットというラフな格好で、休日スタイルのあやめがやって来た。デートに適した格好ではないことは確かだ。心のどこかでホッとしている自分がいる。
「もう、お寝坊さんっ」
あやめスタイルの挨拶、心ゆくまでハグを、されるがままにしたあと、咲は聞いた。
「どうしたの?休日は、終日ゲームじゃなかったっけ?」
こう見えてあやめは、とんでもないゲーマーだ。土日は忙しいと誘いを断るのは基本的にゲームを夜通しやりたいがためだ。
「咲に話があって」
「あ、そういや、私もあったんだ」
2人のデートのことで頭がいっぱいだった咲は、あやめの言葉を聞いて先日見た新入社員について伝えるのを完全に忘れていた。でもここに、あやめがスウェットでいるということは、おそらく編集長はあやめを誘えなかったに違いない。
「じゃあちょっと待って。コーヒー入れる」
咲はベッドから体を起こし、やかんに火をかけにキッチンへと向かった。あやめも咲に続いてキッチンへ入り、買ってきたケーキ用にお皿とフォークを用意する。
「今回も大量買いしたね」
二人分とは思えないような量のケーキを箱から取り出しているあやめに向かって咲は苦笑いする。
「本当羨ましい、その体」
「そう?咲用にビターチョコケーキとティラミス」
「やったー!」
寝起きからスイーツが食べられる自分の胃袋に感謝しながら、咲は二人分のマグカップを持って、床に座った。
「どうぞ。それで、話って何?」
既にロールケーキ一切れを食べ終わっているあやめにケーキのお礼を言いながら、フォークを手に取る。
「うん…。昨日、編集長に告白された」
「ぐふっ」
思わず鼻からチョコレートが出そうになった。
「え、え、え?」
まずはご飯からじゃなかったの?一体あいつは、どんな思考回路してんだ。
見た目とか気にしていたくせに、そこは一足飛びか!
咲は自分が、だんだんと編集長の株があやめの中で下がってはいやしないかと心配になってきた。元はと言えば、編集長の恋の応援をするつもりで色々やってきた訳だし、とにかくここは自分の気持ちを奥底にしまって鍵をかけておこう。
「それで、あやめは…?」
おそるおそる尋ねる咲に、あやめはため息をついて言った。
「保留。まだよく知らないし、相手のこと」
「実際、編集長のことどう思っているの?」
「前よりは、良くなったと思う」
これはイイ感じかもしれない。あやめが異性を褒めることはあまりない。もう少しだ。
「好印象なんだ?」
「まあね。ってかさ、いいの?咲は」
急に話を振られて咲はギクッとした。
「何が?」
「私が編集長と付き合っても」
付き合う、という言葉がいやに生々しく、先ほど鍵をかけたのにあの感情がまた出てきそうになる。
「も、もちろんだよ。なんで?」
「別に。咲がそう言うなら、いいんだけどさ」
それ以上あやめは、それについて言及することはなかった。