行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「ずいぶん思いきったんだな。10日前とは別人じゃないか」

エレベーターの中で、波留斗はさくらを見てそう言った。

「桃子がゲームキャラのデータをパソコンに送ったと思うけど、私自身もイメージ通りにキャラ化けできたと思う。これからの8ヶ月間は、このmirayで生きてくことに決めたんだ」

メイクもヘアセットもコーディネートも、さくらが桃子から教わって完璧にマスターしたという。

「思いの外、リアルでキャラになりきるのは楽しいよ。TBUの社員にも好評だし、mirayの素性に関しては箝口令をしいてる」

さくらは、西園寺コーポレーションに戻るまでの8ヶ月間を自身のモラトリアム期間と位置付けたようだ。

「似合ってる」

「ありがと」

ブルーグレイの瞳は、元々のグレイの光彩に薄いブルーのカラコンを合わせたものらしい。

メイクもナチュラルに見えるが、キャラをたたせるために、計算し尽くして色を乗せているそうだ。

確かに保守的な゛西園寺さくら゛を知るものは、このmirayと同一人物とは思わないだろう。

「当社の社長と副社長、開発部長に挨拶をしたら、CMとポスター撮影のための外部に委託したスタジオに移動してもらう。俺も付き添うんで宜しく頼む」

「撮影は初めてだけど、楽しんで頑張る」

波留斗は、嬉しそうに笑うさくらの肩をがっしりと掴んで引き寄せると

「マジ、お前、カッコ可愛いな」

と言って、さくらの髪を反対の手でガシガシっと撫で回した。

「ちょ、やめてよ。これでも大事な商品なんでしょ?大切に扱いなよ」

波留斗を押し退けて髪を整えるさくらの拗ねた顔は、これまで以上に魅力的で、波留斗は抱き締めたい衝動を押さえ込むのに必死だった。


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