行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「miray、お疲れ様。頑張ったね。もうすっかりmirayじゃん」

イベントを終えた舞台裏で、桃子が、さくらの肩を満足気な表情でバシバシと叩く。

「あんた、マジ、カッコ可愛いよ。今の方が断然、あんたの素だね」

小学生の頃からの親友である桃子は、さくらが西園寺家のことを気にして、素の自分を曝け出すことに躊躇していることに気づいていた。

TBUを立ち上げたあとも、さくらの財力や経営手腕に甘えて、好き勝手やらせてもらっている桃子や拓海に、さくらが何らかの負い目を感じていることはわかっていた。

だから、イケメンバンパイアゲームのコスプレイベントで自分を解放し、mirayという新しい自分を見つけて伸び伸びと過ごすさくらの姿は、とても眩しくて愛しかった。

「mirayの方が気負わずに自分のままで過ごせるのは本当。だけど、この滑り出しの良さは、桃子の作る素晴らしいキャラとシナリオ、拓海のゲームクリエイト能力、南條ビバレッジのDenizにかける情熱と愛情が産み出した結果だから」

そう言って笑うさくらは、この数週間で、桃子も頬を赤らめてしまうほどに魅力を増してしまった。

「あーん。友達なのに好きになりそう」

「こっちはずっと前から好きだけど?」

そう囁いて桃子の肩を抱く今のさくらは、どう見ても、イケメン男性だ。

ブーツは身長を170cm以上にするために、シークレットブーツになっている。

「おいおい、桃子を口説いてる様に見えるぞ。誤解を生むだろ」

近づいてきた拓海も、反対側から桃子の肩を抱くと、悩ましい三角関係の出来上がりだ。

それを見つけた千歳が、嬉しそうに3人に近づく。

「わあ、すごいスリーショット。社内報に載せたいので写真とってもいいですか?」

「ああ、俺のスマホにも送って」

拓海の言葉に頷いた千歳は、カシャカシャと数枚の写真を撮った。

「南條ビバレッジさんとの仲睦まじい様子を見せないとな。俺が撮ってやるから並べよ」

ニヤニヤと、拓海が千歳のスマホを取り上げ

「ほら、お前ら肩を組め」

さくら・・・いや、mirayを中央にして、左右に波留斗と千歳が並ぶ様に指示する。

「えっ?いいんですか?嬉しいな」

喜ぶ千歳と複雑そうな顔をする波留斗。

「ほら、mirayはDenizを持ちな」

Denizを顔の横に置いてポーズをとるmirayと、その肩を抱き寄せて左右に立つイケメン2人。

そこに写ったmirayは、儚げな少女の様に見えている。

南條ビバレッジとTBUの双方のホームページに載せられた2枚の写真は、mirayの性別をわからなくさせるスクショ必須のNo.1アイテムとなった。




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