行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?

ハンター&ターゲット

公開イベントを終え、南條ビバレッジに戻った波留斗と千歳、mirayは、本社のエントランスで待ち構えた社員達から盛大な拍手で出迎えられた。

「公開イベントの成功、おめでとう。そして当社への売り上げ貢献に感謝している」

薄い緑色の薔薇の花束を抱えた副社長の悠紀斗が、社員の前に一歩踏み出すとmirayに花束を渡した。

緑色の薔薇の花言葉は

゛穏やか゛゛希望を持ち帰る゛

その数は50本。

意味するものは

゛恒久゛

愛の囁きではないことに好感が持てるが、きっと、副社長秘書が選んだのだろう。

「この結果は、開発室および南條部長をはじめとした広報部の皆様の努力の賜物です。もちろん、営業部をはじめ、全ての社員の方々のご尽力がDenizの好発進を決定付けているのでしょう。こちらこそ、このような機会に立ち会わせて頂き感謝申し上げます」

美しいアルト寄りのテノールがかったmirayの声がホールに響く。

謙遜するのでもなく、只、南條ビバレッジの社員全体を褒め称えるmirayの思慮深さに、社員一同が満足な笑みを浮かべた。

「わが社を誉めて頂き光栄だ。さあ、ホールで祝杯の準備をしている。松嶋をはじめとした映像班の面々も待っている。行こう」

悠紀斗がゆっくりと、mirayの背中に手をあてエスコートしようと近づいた。

「副社長、開発室に寄ってから会場に伺いますので、お先に向かわれて下さい。行こう。波留斗、千歳。ああ・・・皆様も、お出迎えありがとう。では後程」

mirayが出迎えた社員に、妖艶な微笑みを向けながら、副社長のエスコートをかわす。

悠紀斗は苦笑しながらも、その卒のない対応に感心していた。

゛なるほど、俺を牽制して、波留斗をさりげなくたてるとは、忠実なバディだな」

悠紀斗はそれ以上、mirayを引き留めることなく、

「会場で待ってるよ」

とその場を立ち去った。



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