行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「ああ、mirayちゃんは卒がないというか、否、流石、さいおん・・・」

「千歳!」

゛西園寺家のお嬢様だね゛

という言葉が続くのを懸念した波留斗が、千歳の言葉を遮った。

「あっ、ごめん」

社内とはいえ、まだ始動したばかりのプロジェクト。

mirayの極秘情報が誰かの耳に入るのはまずい。

特に、副社長の悠紀斗が、mirayの素性を知ると厄介なことになるだろう。

西園寺コーポレーションの創始者は明治時代であれば華族の出。

現代でも名を馳せる大手商社だ。

利益を第一に考える悠紀斗であれば、どんなことをしてでもさくらを手中に落とそうとするだろう。

いずれバレるにしても今はその時ではない。

TBUにも箝口令が敷かれているし、西園寺さくらはそもそもが経営者としてもほとんど社員と接触することなく過ごしていたため、身バレする可能性は低い。

しばらくは時間が稼げる予定でいるのだから、こちらから敢えてネタバレする必要はない。

「副社長の場合、あからさまな好意というよりは好奇心だろうけどね。うっかり近づき過ぎると火傷しそう」

mirayがクスっと含み笑いをした。

「火傷とはどういう意味だ」

「うーん・・・同族嫌悪?」

゛自分に似たものを感じて毛嫌いする゛

ということだろうか?似ても似つかないのに・・・。

悠紀斗とさくらが同じ感情や経験を共有すると考えただけでも、波留斗の胸にモヤモヤとした感情が沸き上がった。

同族嫌悪が良い意味ではないことは分かっていても、湧き出す嫉妬は止まらない。

mirayを見つめ続ける波留斗に、mirayが微笑んで言った。

「mirayは波留斗のバディだから、安心して」

「別に・・・同じ会社の役員だ。裏切りじゃない」

「まあ、それでもだよ」

素直じゃない波留斗の耳が赤くなっているときは喜んでいるとき。

この数週間で、そんなことがわかるくらいには、さくらは波留斗を理解していた。
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