行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
さくらと波留斗の住む部屋の階に着き、波留斗がエレベーターの扉を開けている間にさくらが降りる。

さくらはまっすぐに目的の部屋の前に進むと、指紋認証で部屋のキーを解除する。

「ただいまー。あー疲れ・・・た?」

ドンっとさくらの背中に衝撃が走る。

「痛っ!」

気がつくと、さくらは玄関の正面の壁を背に立ち、波留斗に壁ドンされていた。

「暴君がお望みか?」

「はい?」

「それなら望み通りにしてやるよ」

「ん、ちょ、ん・・・はぁ・・・」

柔らかい物が、さくらの唇を覆っている。

それは、何度も何度も離れてはまた近づき、貪るように重ねられる。

「ちょっ、波留斗、どうしたの?」

そう、波留斗はさくらにキスをしているのだ。

「お前は誰のものかわからせてやるよ」

波留斗の目はギラギラと熱をもち、壮絶な色気に満ちている。

さくらの唇ばかりを貪っていた波留斗の薄い唇が、徐々に首や耳元に落ちていく。

「こら・・・商品に手を出しちゃ・・・いけません!」

「暴君なら人の忠告は聞かない。好きなようにやる」

「ちょ、そこは見えるって・・・」

胸元のシャツが開いているギリギリのラインの首元に、チュッと波留斗が赤い跡を残す。

「お前を所有する誰かがいるって、思わせるのも、謎めいてていい」

「勝手なこと言って・・・んっ」

再び、波留斗の唇がさくらの唇を攻める。

さくらにとってはこれが正真正銘のファーストキスだ。

大事にしてたわけでも、もったいぶってたわけでもない。

自分からしたいと思ったことも、奪おうとされたこともなかっただけだ。

「何・・・考えてる?俺のことだけ・・・考えてろ!」

怒りの中に欲望を滲ませた波留斗が、さくらを見つめていた。

西園寺さくらに戻るまで残り7ヶ月。

それまでに結婚を約束したり、愛を交わすような存在に出会うとは思えない。

好きでもない人と結婚させられ、子供を産んで会社を継ぐ。

そんな未来よりも、自分を求める波留斗の強引さに負けてみるのもありではないのか・・・?

西園寺さくらとmirayの中間に立つ今のさくらは、己の感情に素直になっていた。

「いいね・・・。暴君波留斗・・・。そそられる」

さくらは自分から波留斗の唇にキスをした。

初めてとは思えないほどの熱いディープキスだ。

さくらは元々何でも器用にこなす。

だから、波留斗の真似をすればそれなりのことができるだろうとふんでいる。

「ちゃんと・・・つけてよ?」

「・・・くっ・・・黙れよ」

今までとは違う自分になる。

今はただ、本能のままに、自分を解放してみるのもありだと、さくらはゆっくり目閉じた。




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