行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「俺には妹がいたんだ・・・」

「妹?」

「ああ、生まれる前に死んだ。俺のせいで」

背後からさくらを抱き締めたまま淡々と語る波留斗の表情を見ようと、さくらが顔を向けようとすると

「このまま聞いて欲しい」

と波留斗が耳元で独り言のように呟く。

「うん」

波留斗の抱える闇を、共有出来るのならと、さくらは波留斗の言葉に耳を傾けた。

「3歳の時だった。庭にいる母さんを見つけた俺は、2階のベランダをよじ登って母さんのところに行こうとしたんだ」

想像できる展開に、さくらの腰にまわされた波留斗の腕をさくらはぎゅっと掴んでしまう。

「母さんは妊娠5ヶ月だった。落ちそうな俺を見つけた兄さんが大声で叫んだ。母さんはベランダの下に走ってきて、落ちてきた俺を・・・」

「波留斗・・・」

言葉を止めた波留斗を、さくらは正面に向き合い抱き締めた。

「大丈夫・・・?」

「・・・ごめん。この話を誰かに話すのは初めてだから・・・」

さくらは、波留斗の体が小刻みに震えているのがわかった。

「どんな波留斗も大好きだよ」

「うん。知ってる・・・」

波留斗の声は泣いているように聞こえた。

「・・・落ちてきた俺を、抱き止めた母さんは、急にお腹を痛がりだした。当然だよな。幼児とはいえ、15kg以上の体重があるしそれに高さとスピードが加われば結構なダメージが加わる」

波留斗は溜め息をつくと

「母さんは気を失い、病院に運ばれ、妹はお腹のなかで・・・生まれる前に死んだ」
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