枯れた涙にさようなら。
「でもあの天満と一緒に昼飯食べるくらい仲が良いって知ってちょっとショックだな〜」
メロンパンを食べる手を止めて、哲平が呟いた。一緒にご飯を食べる約束をしていたというアイツ、天満っていうのか。
「天満ってあの?」
「そう!!」
「あのって?」
天満・という名前を聞いて、津山が食いついていた。天満って、そんなに有名なのか?
哲平といい津山といい、どうして他のクラスの人の名前を知っているんだろう。俺はようやくクラスの人の名前を覚えたところだと言うのに…
「ちょ〜女子が騒いでんじゃん!既に何人かに告白されてると噂の!」
「知らん」
興奮している哲平の言葉をスパッと切る。
多くの女子は、常にキャーキャー騒いでるもんじゃないのか?俺の一番身近な女子がかすみなもんだから全くそういうのが分からない。かすみはクラスの女子みたいにアイドルの誰々がかっこいいとか俳優の誰々が素敵で好きとか言わないからなぁ。
「まじかよ〜」
「そんな顔で見るな」
呆れた、と言わんばかりの顔で哲平が俺を見てくる。そんな常識無いと思われてしまうまでのことなのか?噂なんてお前らが教えてくれないと耳に入ってくるわけないだろうが。
「え、付き合ってるとかじゃないんだよね…?」
さっきの呆れ顔とは一変。哲平は急に心配そうな顔をしだした。忙しいやつだ。
「俺に聞くな」
「喜一に聞かなくて誰に聞くっていうんだよ!!」
「本人に聞けばいいだろうが!」
「無理だよ!!」
間髪入れずにお互いが言葉をぶつけた。今日だって直接本人に聞きに行ったんだ。その方が手っ取り早いだろう。噂よりよっぽどあてになる。
そもそもかすみがそんなことで嫌な顔してくるはずがない。そういうやつだ。
「あっちのクラスの友達とかに聞いてみたら?」
「はっ!!それだ!!ナイスアイデア」
津山が折衷案を出してきて、その話は終わった。
あのかすみが仲良くしてる男子・か……確かに気になるかもしれん。