もうひとりの極上御曹司

緑から連絡があったと言いながら悠生がテーブルに着くというオプション付き。

緊張からくる千春の居心地の悪さは半端なものではなかった。

千春より三歳年上の悠生は最近、パリコレでランウェイデビューを果たした人気モデルと一緒にいる写真を撮られて世間を騒がせている。

今はもう別れたと言っているが、愼哉同様悠生もモデル並みのルックスで、おまけに大企業グループの御曹司。

次男という立場も女性にとっては気軽に声をかけられるポイントなのか、愼哉よりもマスコミを騒がせる機会は多い。

そのどれもが事実無根だと苦笑する悠生を見るたび、御曹司も大変だと千春は同情している。

駿平を伴い北海道にいる緑と成市を除いた木島家の食卓に、どうして他人の自分が混じっているのか不思議に思いながら豪華すぎる食事を済ませ、今晩千春が泊まる離れに来たのだが、大量の洋服を目の前にして、愼哉に抱き寄せられたまま、気持ちをどうにか保っている……という、現在。

愼哉は混乱している千春を広いリビングに連れて行き、ソファに座らせた。

スウェーデンから取り寄せたコの字型のオフホワイトのソファは千春も気に入っていて、今も付属のボルスタークッションに体を預け、膝を抱えて座っている。

これまで何度も来たことがあるこの部屋は、昼間は大きなガラス窓から光が差し込み、とても居心地がいい。

広すぎる木島家の敷地内の中で、千春が一番気に入っている場所でもある。

白を基調とした広い部屋の中央にはグランドピアノがあり、愼哉が弾き始めた。

「あ……。いつもの私の歌」



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