もうひとりの極上御曹司
「じゃあ、早くハンバーグを食べられるように、頑張るね」
「俺も、気合を入れ直して頑張るからな」
弾ける笑顔を残し、駿平は席に戻った。
その後ろ姿を見ていた千春は、気を取り直して手元の書類を手に取った。
そのとき、事務所の入り口から明るい声が響いた。
「あら、だめよ。今日は駿平先生と成市さんと札幌で亜沙美さんと合流する予定なんだから」
聞き覚えのあるその声に千春と駿平が振り向くと、淡いイエローのワンピースがよく似合う女性が立っていた。
「あ、緑さん」
事務所の所長である小平弁護士の妹、木島緑が顔をしかめている。
小柄で細身の色白美人。
遡れば皇室とも縁があるという名家の出身で、今では国内最大の企業グループである木島グループの総裁、木島成市の妻だ。
政略的な結婚で結ばれたにもかかわらずふたりの仲の良さは有名で、特に成市の緑への溺愛ぶりはかなりのもの。
常に警護がついているのはもちろん、緑の居場所や行動は、逐一成市に報告される。
二人の様子がマスコミに取り上げられることも多いが、緑が撮られた写真に不満を口にすることも多い。
『実物のほうがもっと綺麗なのに。腕のいいカメラマンを使いなさいって出版社に抗議するわ。それに、専属のスタイリストやメイクがいるんだから、どうせ撮るなら事前に声をかけてほしいわ』
などと言っては本当に出版社に出向いたこともあり、そのたび周囲を慌てさせている。
生まれながらのお嬢様で無敵の世間知らず。