もうひとりの極上御曹司
そんな緑は、結婚後も彼女の兄である小平の事務所をよく訪れている。
緑は常時警護の男性を複数引き連れていて、十年以上の付き合いがある千春でさえ驚かされることは多い。
緑は千春ににっこり笑いかけると、すぐに目を細めて駿平を睨んだ。
「駿平先生、忘れたの? 今日は札幌に出張中の亜沙美さんとおいしいワインをいただく約束でしょう?」
「あ……そう言えば。いや、だけどせっかく千春が俺を誘ってくれて……だけど亜沙美を怒らせると怖いし……えっと」
緑の言葉に、駿平は口ごもった。
どうやら、今日は緑や亜沙美との約束があったらしいと千春は察した。
「千春ちゃんを心配し過ぎるのもいい加減にしないと嫌われるわよ? 千春ちゃんだって四六時中お兄さんに心配されてたら恋人だってできないわ」
「恋人? そんなのまだ早いですよ。千春はようやく二十歳になったばかりで、まだ学生だし」
駿平の焦る声に、緑は「相変わらずだこと」とため息を吐いた。
千春も緑の言葉に同意するように頷いた。
駿平は千春が成人したあとも彼女を自分のテリトリーの中でかわいがり続けている。
兄として唯一の家族である千春を心配しているだけなのだが、かなり度が過ぎている。