果報者
結局彼女は仕事を辞めんかった。



なんであんなに泣き枯らしたのか
分からんぐらい普通の彼女。



次の日の朝、パンパンの目で
”おはよ”って笑った彼女を見て
”昨日はごめんね。生理前だったみたい”
って笑う彼女を見て




ほんまは真剣に話したいし
理由だって生理前なだけじゃないことだって
聞きたかったけど
臆病な俺は何にも聞けんくて。



いつも通りの生活を選んだ。



彼女の中で何も葛藤があるのか、
彼氏やのにそんなことさえ
面と向かって聞けんくて



こんな時、斗やったらどうするんやろうとか
ばっかり考えるだけの日々を過ごした。





あの日から少し経って




いつも通り
風呂から上がり携帯を見ると
志乃さんが無事に出産したって
興奮気味に龍から連絡が来てた。
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