現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「ええ。仲良くなった司書の女性の話では再来月に辞める方が出るって」

「じゃあ紹介状の用意がいるね。後は、シーモア伯の許諾?」

「そうなんだけど……それが問題なのよ」

がっくりとうなだれたグレースは下を向いたまま、ぐずぐずと話しだす。それを隣でヴェネディクトは静かに聞いてくれる。
この時間が昔からのグレースの精神安定剤だ。こうやって優しく愚痴を聞いてくれる相手がいるからこそ、やってこれた。

今もヴェネディクトに話す事でグレースの悩みは整理され、解決の方向に向かっていく。



「じゃあ、王立図書館で働くには経験者の方が有利って事だね?」

「そうなの。でも経験なんて、どこでつんだらいいのか分からないわ。それに今から経験を積んでいたら、再来月には間に合わないもの」
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