現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない

そんな贅沢な使用人の使い方なんて、まるで大貴族みたいだ。いや、実際ヴェネディクトは大貴族になるのだが。

「じゃあ私の為に沢山の人にご迷惑をかけちゃったのね」

「いや、グレースの為じゃなくて僕の為だよ。その為にグランサム公爵に無理を言って、従僕に強行軍で移動させて、パジェットに半ば脅して頼み込んで」

「脅して！？」

「半ば、だよ。僕の結婚、ひいてはグランサム公爵家の将来がかかってるってね。それから君にはに領地を見せて回って、周囲にそれとなくお披露目もしてさ」

「まぁ……」

開いた口が塞がらないとはこの事だ。何から何まで、ヴェネディクトによって周到に用意されていただなんて、ちっとも気がつかなかった。

「元々、グランサム公爵にグレースの話はしていたんだ。どうして事業を初めたいのか最初に聞かれてさ。彼女を迎える為に資産が欲しい。その為に事業のやり方を教えてくれって。」